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同人誌見本
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Nevidebla Mano
(2013/03/17)
ミラの直接使役時におけるマナの供給方法が、体液を触媒にした粘膜摂取でも可能となっていたらIF。
マナが遮断された空間に閉じ込められてしまったミラとガイアス。このままでは現界を維持できないミラへ、ガイアスが直接使役を申し出る。しかしマナが術者から離れると消失してしまう特殊な空間の為、通常の供給方法は不可能。そこでミラは自分は体液を媒体にした粘膜摂取ができると、ガイアスに自分を抱くよう迫る。
【R18/A5/24P/¥400】
白い光しかない世界を、誘ってくれる金の軌跡が優雅に漂っている。
ミラ=マクスウェルに対し、そんな錯覚をガイアスは覚えた。らしくもない。男は気恥ずかしさに目を伏せた。だがそう思ってしまうのは致し方ない。それほどここは不思議な空間だった。
簡単に言ってしまえば、つい先ほどガイアスとミラは遺跡の罠にかかり謎の部屋に閉じこめられてしまっていた。分史世界の、正史にはない山中の遺跡。以前訪れたウプサーラ湖の遺跡とはまた違った趣を呈している。
美しい。見たこともない材質。角度によって僅かにパールの光沢を放つ、乳白色の壁と天井と床。暖かくもなければ冷たくもなく、柔らかくなければ硬くもない。
光源は見当たらず、その空間には壁しかないのに明るかった。影が出来ていないことから素材自体が光っていると推測される。おかげで、継ぎ目すらないこの部屋にいると浮いている気がしてくる。普通の人間ならば平衡感覚がおかしくなって狂ってしまうことだろう。声や空気の感触でなんとなく四方の距離が掴めるため、男はこの異常な部屋にいてもいつもと変わらず眉間に皺を寄せていた。
「どうだ、ガイアス」
凛とした声音が男を現実に引き戻す。金の軌跡、否、ガイアスの他にもう一人この空間に存在する大精霊、ミラ=マクスウェル。
「いや、駄目だ。先ほどから試しているが精霊術が使えない」
物理的な方法では壁に傷一つ付けられなかった。ならばと恃んだ精霊術は、そもそも発動すらしてくれない。元来術を使わないガイアスであったが、それでもそこの壁を粉砕する力を借りることくらいは出来る。
人の王の答えに、大精霊は顎に指を沿え深刻な事実を述べた。
「やはりな。この部屋にはマナも精霊の気配もない。呼びかけに応じ参じることすら叶わぬようだ」
「マクスウェルたるお前の声すら届かぬとは。手詰まりだな」
「大人しく助けを待つか、ルドガーが時歪の因子を破壊し正史世界に戻るのを待つしかあるまい」
ルドガー達ならば心配ない、ここは大人しく待とう。困っていても仕方がないとミラは現状にあっさり見切りをつけ、男の険しい顔を和ませようと笑顔でもって提案した。
「だが、ミラ。それでお前は大丈夫なのか」
「どういうことだ?」
ミラの笑顔に、ガイアスはつられることは出来なかった。非常用の食料もあるし、自身ならば一週間ほど度持つと踏んでいる。だが、精霊である彼女は。
「この部屋にはマナすらないと言ったではないか。お前に消えてもらわれては、困る」
ガイアスの指摘にミラは口元を押さえた。
「しまった。うっかり口を滑らせてしまった」
「言わずとも、時が来れば解かること。お前は現界維持に大量のマナを必要とするのだろう。なぜ隠そうとする。精霊にとっての直接使役は特別な意味を持つことは知っている。だがこの非常時にそうも言ってはいられん。不本意だろうが、余裕がなくなる前に申告しろ」
俺のマナを与える。
仏頂面で男は言った。ミラの目を見ることが出来ない。ガイアスは自分が傷付いていることが苛立たしかったし、なにより目の前の大精霊に悟られたくなかった。
『お前に直接使役されたくない』
言われてもいないことを、被害妄想し哀傷するなど愚の骨頂だ。
「その、いいのか?」
だが、ミラの反応はガイアスの予想を全力で外れていた。
「お前に直接使役してもらっても、いいのか?」
「どちらかというと、それは俺の台詞だ」
いざとなれば問答無用で直接使役しようとは覚悟しているが、それでも是非を問うて本人の意思で是と答えて欲しい。だが、まさかそれを相手から問われるとは。
ミラ自体、残念なことに非常時と割り切ってか恥ずかしそうにしている様子はない。だから余計ガイアスは彼女の態度が理解出来なかった。
(まるで、俺が直接使役される精霊のようではないか)
やはり精霊の主ともなれば、直接使役する相手のほうが振り回されるのか。だが、このままではいけないのはこちらとて承知。荒れ狂うマクスウェルの力に嬲られようが、彼女を失うわけにはいかない。
「俺も覚悟は出来ている。ミラ、もしものときは直接使役によってお前にマナを与えよう」
「そうか。すまないな。ではよろしく頼む」
ガイアスの強い意志に、ミラは吹っ切れたように頷いた。
「実は、余裕がなくなりそうなんだ」
「食物だけでなくマナの燃費も悪いのかお前は」
いくらなんでも早すぎる。渋面の男に、ミラは唇を尖らせた。
「どうにか脱出出来ないかと、力を振るう為にマナを放出したのだ。そう悪し様に言ってくれるな」
「すまなかった」
ガイアスはすぐさま謝罪した。ミラも本気で機嫌を損ねたわけではないようで、自分の失態が恥ずかしくて直接使役をすぐに言い出せなかったとでも言うようにガイアスの謝罪を受け入れる。
「いい、私も考えなしだった。ではガイアス、腰を落として、私と目線を合わせてくれ」
「あ、ああ」
ミュゼを直接使役していたのとは、また違うようだ。そのまま念じればよいのではないのだなと、ガイアスは若干戸惑いながらも素直にミラの言う通りにした。
屈んだ真正面にミラの顔がある。濃い桃色の瞳に己が映っている。……随分近くないか?
だが、そんな気恥ずかしさは一瞬で吹っ飛んだ。
「ミ、」
ガイアスの、疑問を投げかけようと開いた唇。
飲み込まされたラの音。
ふくよかな、暖かい、湿った感触。なんとも言えない芳醇な薫りが男を包み、一瞬にして酩酊してしまう。緩みきった隙間から弾力のある動きをしたものが進入してきて、くちゅりと生々しくも艶やかに鳴り跳ねた。
「――ッ!?」
その音で我に返ったガイアスは後ろに跳び退った。
「な、なにをする!?」
「それはこちらの台詞だ。危ないだろう」
不恰好に尻餅をついた男に距離をつめて、女は仁王立ちで見下ろした。
「覚悟したと言ったから、私も直接使役されてやろうというのに」
「な――待て、ミラ。整理させろ」
もしかして、お互い大変な思い違いをしているのではないか。ショックから覚めたガイアスは、ようやく頭が回り始めた。呆れ顔で見下ろすミラの視線から逃れるように立ち上がると、ガイアスは矢継ぎ早に尋ねる。
「俺は直接使役を願い出たはずだ。精霊の直接使役はマナを与え精霊自体が力を振るうことで、力を振るわずともマナだけ供給することも出来るのだろう? 俺は今まで直接使役は念じて霊力野からマナを注ぐものと思っていたのだが、お前は……その、」
接吻でするものなのか?
始めの勢いはどこへやら。恐る恐る言葉にしたガイアスに、ミラはあっけらかんと答えた。
「そうだが」
む、知らなかったか?
首をかしげた女に男は全力で叫んだ。
「知るか!」
「それはすまなかった。ミュゼから聞いていると思っていたが、勘違いだったようだな」
「ミュゼも、接吻でもマナ供給が可能だというのか?」
「いいや、私だけだ」
「……なんでもかんでもミュゼが俺に話しているという考えは改めてくれ」
もしミラの思っている通りならば、ミュゼ自身だけでなく精霊となったミラまでも全裸かどうかまで伝えてくれたはずである。
「改めよう」
ミラは神妙に首肯した。ガイアスは盛大にため息をつきたかったが、まだ本題に切り込んでいないことを思い出し、ミラ=マクスウェルの直接使役法を尋ねた。
「俺の知っている知識はさっき言った通りだ。して、お前をどうやって直接使役すればいい」
「うむ。一応普段は他の精霊と私の直接使役方法は変わらないのだが――今回に限ってはそうもいかん。この部屋ではマナが使役者から離れるとどういうわけか消滅してしまうようなのでな。さいわい、私はお前も知っている通り人として生きてきた、そのため人間の身体感覚を有したまま精霊として現界が可能。だからこそ今回の方法がとれる」
ミラの説明に接吻の理由をようやく得心したと、ガイアスは項垂れとも頷きともとれる動作で応えた。だが、ミラの説明は更に続いた。
「マナの享受方法だが、正確に言うなら接吻でなく、粘膜接触による体液の授与ならば可能なのだ」
ガイアスの脳が、一瞬考えることを放棄しかけた。
「簡易方法で血や汗、涙や唾液などの咥内摂取。だが最大効果を発揮するのは――」
その一瞬が命取りだった。彼女の説明が完了する前にたどり着いた結論に待てと静止の言葉を挟むことも出来ず、男は女の口からその言葉を発せさせてしまった。
「性交だ」
実際にミラ自身から語らせてしまった言葉の破壊力の凄まじさたるや、ガイアスは呼吸を忘れた。真っ白になった思考に女の涼やかな声だけが通り過ぎていく。
「人間における生殖行為は特別なものだと知っている。だから私はお前に『本当にいいのか』と念を押したのだが、くっ」
「ミラッ」
唐突に倒れかかったミラを見て、ガイアスはやっと我に返った。
女の細い腰を抱きしめ、
「すまな、っんん!?」
引き上げざま、男は断りもなく強引に女の唇を奪った。
たっぷりと唾液を纏わせた舌を相手へ捻じり込むと、無防備な咥内を蹂躙する。驚いて戻そうとする舌を避け、敏感な上顎を舌先でくすぐるようにすれば、ミラは押し返そうとした手の力を弱めた。
「んっ、ふぁ…ッ、ぁ…」
部屋に荒い吐息と唾液のはぜる濃密な音が響く。すっかり抵抗しなくなった女を男は抱き寄せた。ミラがガイアスの意図を理解したためなのか、マナ不足が続いているためか、強烈な口付けのためか、どれかは解からない。だがしっかりと抱きしめていないと、ミラは自力で立てないようだった。
弱々しく背後に回した腕は、ガイアスに捕まっている用途を成してはいない。ミラはガイアスのされるがままになっていた。
しかしながら、自ら実行したガイアスとて平静でいられるわけでもなかった。密着した女の柔らかな胸に、自身の早鐘を打つ鼓動が伝わってしまってはいないかと、あらぬ焦りに心を焦してしまう。激情に荒ぶる心を宥め賺すため、今はこれで我慢しろとぴったりと唇を寄せむしゃぶりついた。
「…っう…ふ、んぁッ、あ…」
確認のため、今度は相手の舌をこちら側の口腔へ招き寄せる。ミラの方から唾液を接種する行動はない。男は再び己の舌を女のそれに絡ませ、甘噛み、啜って、解放した瞬間
「ぁ、――ひぁッ!?」
背をつうっと撫で上げた。
かくんと膝の折れたミラが倒れぬよう、ガイアスは再び女の細腰を抱く。
「大丈夫か」
まさか口付けでこんなになってしまっていたとは思わず、ガイアスは言ってしまってから己が発した言葉の冴えなさ加減に絶望した。
最低だ。もっと気の利いた台詞で、いや、初めから自信を持っていたとしても、己にそんな台詞が浮かぶとは思えなかった。ミラが口付けのせいで腰砕けになってしまったのだと思えればよかったが、それを望めるほどガイアスは覚悟をしていなかった。
『ミラ=マクスウェルはそんなことにはならない』という幻想を打ち砕くことは、相手に失望することではない。己の封じ込めた感情に向き合うことに他ならないのだ。
もう、ミラは人間の女ではない。だというのに、人間の女と変わらない反応を示した。彼女はもう大精霊になってしまったのだと、それで納得させていた浅ましい鍍金が剥げる。
「……大丈夫だ。が、最後のは余計だ」
いつもの軽やかに鈴が鳴るような声ではなかった。ようやくと絞り出した様子に、先ほどまでの大精霊の威厳はない。男に抱きかかえられているのは、力を込めれば折れてしまいそうな華奢な体躯の女だった。
「お前ならもう察してくれているだろうが、唾液の接種程度では一時しのぎに過ぎない。汗も涙も効率として劣るし……さすがにここにいる間、ずっと口付けているわけにもいかんだろう」
ミラの言葉に謝罪するのも違う気がしてガイアスは黙っていたが、ミラは一言文句を投げつけたきり、元の話題へ戻った。それでも先ほどのように真っ直ぐこちらを見て話してくれないのが、ガイアスにはつらかった。
よしてくれ。そんなふうに普通の女のような態度をとらないでくれ。
「かといって血液などもってのほかだ。お前がもたん。なにより私が嫌だ。不味い」
「選り好みしている場合か」
「場合だ。というかガイアスがもたないと言ったろう。お前の精子を媒介にするのが一番効率かいい。安心しろ。いくら人間の身体感覚を有しているとはいえ、私は精霊だ。子は生せぬ」
あまりのあけすけな物言いに、ガイアスはカッと胃の腑が熱くなる。
「っ、俺をその辺の人間と一緒にするな。出血程度、多少ならば」
「くどい。」
それ以上の反論は許さない。鋭く遮った声音は、まるで発した自身を傷つけたかのようにミラは力なく呟いた。
「そんなに、そんなに人でない私と交わりたくないか……いや、それが普通だな。すまない」
「違う!」
考えるよりも前に、ガイアスは反射的に否定の言葉を叫んでいた。
「そうではない、俺はお前が――ッ」
だが、その先はいくらなんでも告げることは出来なかった。こちらの気も知らないでと、きわどい言葉を喋るミラに八つ当たりのような態度をとってしまったことを、ガイアスはひどく後悔した。
言葉に出来なかった激情が溢れて、男は女をきつく抱きしめる。
「ガイアス、無理はするな」
女は男の背に腕をまわすと、ぽんぽんとあやすように叩いた。全てを許すように。
それで男は吹っ切れた。これ以上耐えられない。彼女を傷つけるくらいなら、己の不甲斐なさを曝し赦しを請おう。
「いいんだ大丈夫だ、こうなることは解っていた。だから最初から言うつもりは、うわっ」
ガイアスはミラを押し倒した。固くも柔らかくもない奇妙な感触の床が、二人分の衝撃を吸収する。
「ガイアスなにを、んぁッ」
男は目を白黒させる女の腕を掴み、膝を割り強靱な体躯を滑り込ませると、呼吸さえ奪うように反論を封じ込めた。
肉厚な唇を食み、舌を引きずり出し極上の飴でも味わうように舐り、こぼれそうになる唾液を啜って雄々しい喉元が嚥下に蠢く。ただの儀式ではない、官能的な行為だと見せつけるように。
「解ったろう。俺に抱かれることをミラが耐えられるとは思えない。――好きなんだ」


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