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Flag;解呪にあたって魔力抵抗がなくなるが、私に何を言われようとも絶対手を出すなよ!
(2012/04/22)
ヤンデレディルムッド×後天性女体化ケイネス。
女体化の呪いにかかってしまったケイネス。解呪には魔性の蔦により魔力を抽出・精製せねばならず、その間は魔力抵抗がなくなり魅了に抗うことができなくなってしまう。しかも突貫で改造した罠用の蔦は、催淫作用まで取ることができなかった。そのためケイネスは絶対に何があっても自分に手を出さぬようランサーに釘を刺すのだが、それって、つまり:フラグ。
【R18/A5/24P/¥300】




「報告しろ」
先ほどよりは落ち着いた様子でマスターが命ずる。
「畏れながら。やはり、異常は見受けられませんでした」
サーヴントの上申は予想通りだったのだろう。文句はない。それでも面白くなさそうに鼻を鳴らすと、ケイネスは言った。
「仕方ない。犯人探しは後だ。これから私は解呪の法を試みる。本来であればソラウに手伝ってもらうところだが、」
一旦言葉を区切ったケイネスに、すかさずランサーは面を上げた。
「不肖、このディルムッド・オディナ。主の命とあらばなんなりと」
ここで挽回しなくては。必死の形相に歪みそうになる表情を押さえながら、ランサーは主の言葉を待つ。
改めて見るケイネスの顔は、苦虫を噛み潰したようであったが、それすら器量を引き立たせていた。女となったケイネスは微笑むよりも君臨する様こそ、明媚。嫋やかな四肢と秀麗な目鼻立ちは、綻ばせれば其処等に居るただの女となってしまう。産まれながらの才に裏打ちされた、圧倒的な支配者の風格。それをそのまま纏った女の艶麗さは、征服され憤りに歪む瞬間こそ最も美しく輝くだろう。
「その言葉、忘れるなよ」
遠回しにサーヴァントの言葉を引きだし念を押す異例さに、ランサーはこれから己が行うことはよほど難事かと気を引き締めた。それを見取って、ケイネスは話の核心を述べようと口を開く。
「解呪には全身の魔力を抽出、精製して呪いを打ち消した後、戻さねばならん。つまり、一時の間私の魔力抵抗はなくなる」
「――な」
思わず漏らした驚嘆に、ケイネスがじろりと鋭い視線を向けた。
キャスターではないディルムッドにとって、いかな霊的存在であっても行使することのできる魔術は限られている。その一端を担わせるからには、出来ないことはないが困難が伴うと判断し、ランサーもそれ相応の覚悟を持った。
だが。今ケイネスが口にしたことは、ランサーの覚悟を持ってしてた範疇外。
「私に何を言われようとも絶対手を出すなよ! 貴様の仕事は無防備になった私の守護。及び、抽出・精製する魔性の監視だ」
「御意に、ございますれ、ば」
震えそうになる声音を隠すように、ランサーは頭を下げた。ケイネスは言っているのだ。ディルムッド・オディナの忌まわしき呪いを、加えて二重に受ける屈辱を、上塗りするような事があらば赦さないと。
ランサーは唇を噛みしめた。恐れと憤慨。
よもやマスターに己が卑しい心中を見破られたのではないのかと。思っても一瞬。浅ましい想いを抱いたのは、単に男としての性だ。
ケイネスとて元は男。表に出さずとも好みの異性を目にすれば心にも止めよう。それを棚に上げて、サーヴァントを如何わしいものを見るような台詞に少しばかり腹が立った。
ケイネスは己に絶対の信頼を寄せている。否、そうするに足るものが彼にはある。だから絶対の信頼こそ通常の状態であれば、そのような傲慢な振る舞いも当たり前のものだ。
だが彼にとって当然であればこそ、彼以外には当然足り得ない。
「どうした」
煮え切らない返答に、ケイネスは威圧的に問う。ここで禍根を残すことは、即ち己が貞操の危機。サーヴァントにしっかりと言い含まねば納得できないと、その声音から伺えた。
「いいえ。――我が身命に替えましても、主の身はお守り致します」
深く頭を垂れて誓ったサーヴァントに、ようやく満足したのかケイネスは立ち上がる。
「監視する魔性は、本来精気や魔力を吸う植物だったものだ。トラップとしてそのまま株を持ってきたが、魔力を抽出・精製するように改造した。魔力を吸い切っても解放されなければ、私を助けろ。急ごしらえ故、その可能性が高い。だが間違っても滅するなよ。私が離れれば自動的に礼装が我が魔力に惹かれ魔性を隔離するようにしてある。呪いの成分が抜けた魔力が完成すれば、礼装の囲いが解ける。最後に私に魔力を戻せ。それで解呪となる」
「御意」
次いで起立したランサーを見届けて、ケイネスが腕を振るうと、ソファの背後に佇んでいた月霊髄液が震えた。幕が引くように礼装が包んでいた中身が現れる。蔦の集合体のようなそれは、一見なんの変哲もない野山に茂る植物だ。
「それと」
だが、極上の女の魔力を感知した瞬間、それは唯の植物ではなく魔性としての本能を剥き出しにした。延びる蔦に四肢を絡まらせられながらケイネスはほのかに視線をずらし、今までの不遜な態度からは程遠い、見た目通りの可憐な女のように、恥じらいを持って衝撃の一言を口にした。
「これ以上手間を掛けられなかった為、力を吸う際の催淫作用は消せなかった」
本格的な改造は丸一日かかってしまい、時間が惜しい。悔しげに吐き捨てたケイネスは、それきり口を噤んだ。それに対し、ランサーもまた何も言えない。言えるはずがなかった。ケイネスの視界に居なかったおかげで、ランサーは目と口を驚愕に開いてしまった表情を見られずに済んだ。先程まで抱いていたマスターへの不満も、すっかりさっぱり消し飛んだ。
確かに、魔性の淫呪に犯され、黒子の魅了まで受けてしまっては『何を言われようとも絶対手を出すなよ!』と釘を刺したくもなるだろう。恐らくケイネスはこの先、与えられる快楽に翻弄され、蕩けきった表情と声でランサーを誘惑する。プライドの高い彼が、己が身と意志だけではどうしようもならなくなる事態でしか解呪する方法がないと知って、全てをサーヴァントに任せなければならない恥辱に震えているのだ。そんなマスターを憐れと思いこそすれ、怒りなど湧く筈もない。
そう考えている間にも、ランサーの眼前でケイネスの躰は淫らに蠢く蔦に絡み取られ、とうとう足が床から離れた。
「くっ」
ケイネスの表情に怯えが浮かぶ。しかしランサーに見られているという意識から、それは一瞬で消え、気丈にも唇を引き結び、碧い瞳は空を睨む。果たして、その気概いつまで持つか。
蔦は、うぞうぞとまるでその一本一本が意志を持つように女の肢体を這いずり回る。ランサーの目線までケイネスを持ち上げると、一旦その動きが止まった。そう思った瞬間、蔦の先端が咲いた。
「ひっ」
「なっ」
これには流石に二人も声を上げてしまう。蔦の先端は、花弁のように赤く四つに裂けた。中から雄蕊を肉にしたような、薄桃色の細い物体が蜜を滴らせてケイネスの肌と被服を穢した。いやらしい粘液が滴り落ちる音を、数十本もある蔦が歌う。
「う…ぅ」
てらてらとぬめる蔦の先が、ケイネスの服の上をなぞる様に這った。袖口から侵入した蔦が、ローブの合わせ目から這い出る。素肌を魔性が舐める感覚に、ケイネスは嫌悪も顕わに身を捩る。そんな抵抗など蔦は意に介した様子はない。むしろ素足に絡む蔦は、まるで相手の恐怖を煽るように膝から先へは触れようとしなかった。
「う、ぁ、ア」
引き結んだ唇は既に綻び、ケイネスはか細い悲鳴を上げ続けている。がちがちと歯の根が合わず、見開かれた碧い眼は恐怖に瞳孔が縮小していた。
抵抗は弱々しく、サーヴァントと相対していた支配者の風格など微塵もない。いや、まだ罅の入ったプライドが、ケイネスの矜持を支えていた。恐慌をきたし泣き喚きそうになる己を、かろうじて押し止めている。
「うごッ」
そこへ、一本の蔦が半開きの口から侵入した。ケイネスは苦しそうに眉根を寄せる。
「んーッう、ぅ!」
蔦は無遠慮に女の咥内を嬲る。嘔吐くケイネスは、生理的な涙を浮かべ首を振る。苦渋に満ちた表情はランサーへ向けられることはない。助けを請うことはもちろん、縋るような視線を向けることも、彼は自身へ赦しはしない。
「っふ、ぅ…ん…ッ」
しかし、変化が表われたのはすぐだった。
苦悶に咽ぶ相貌は、今は明らかに別の感覚を感じ取り歪んでいた。気色の悪さや、息苦しさではない。
「ふぁ…ァ、んぅ!」
洩れる喘ぎへ、微かに甘い響きが滲み始めたことをランサーの耳は逃さなかった。
女の高揚した頬を、抑えきれなくなった涙が伝う。ケイネスは持てる理性を総動員して、魔性から与えられる悦楽の誘惑に抗っていた。蔦により口に含まされた蜜のようなものが、催淫効果を引き起こしたのだろう。
ケイネスの抵抗を嘲笑うかのように、先程まではただ這いずっていた蔦が、ゆらゆらと官能を呼び覚ますようにケイネスの肌を蹂躙し始めた。ローブの合わせは完全に割れ、何本もの触手が形良く盛り上がった胸部を揉みしだく。
ケイネスがローブしか羽織っていなかったことを、今更になってランサーは気付いた。ホテル下階の売店から、シャツと下着くらいは買って来る時間はあった。余計な事をと罵声を浴びせられようが、主のことを思えば手に入れるべきだったのだ。
まるで見せ付けるように、蔦はケイネスの半裸をランサーの眼前に晒した。乳房だけではない。最も秘するべき足の付け根の奥すら、蔦は容赦なく暴き立てる。
「くぅッ」
余りの羞恥にケイネスは目を瞑った。見るなとは言えない。異変があれば、己を助けることが出来るのはこのサーヴァント一人だけなのだ。
蔦は大胆に開かせたケイネスの太腿を、舌なめずりでもするかのように触れる。陰部に直接の刺激がなくとも、蜜によって感度を高められた躰は、それだけで煽られた。
「ッは…!」
蔦がケイネスの口を解放する。今までなんとか押し込めていた嬌声を塞ぐものはなくなった。
「ひ、ァ、ふ…っく」
ケイネスの艶声を引き出そうと、蔦は一層女の肌を辱めた。白く透き通った大理石のようなケイネスの肌は、蔦の蜜がしとどに絡み、薄紅色に綻んでいた。
「んっ、う…ふぁ」
興奮してきたケイネスを貪る蔦から、魔力が吸い上げられていく様子がランサーにはよく視えた。ケイネスが感じるたびに、魔性はより多くの魔力を喰らう。
「やっ…ァ、うぁ、あ」
只人へ近付くにつれ、ケイネスの足掻きは次第に薄らいでいく。理性を保っているのがいっそ不憫でならない。蔦の絶え間ない愛撫に、ケイネスの精神は摩耗していく。それは人として例え様もない屈辱だろう。しかもその様子をサーヴァントに包み隠さず見られているのだ。
今やケイネスの花孔は蜜を滴らせ、蔦の与える快感を悦び、更なる刺激を求め震えていた。
快楽が拷問となるならば、まさしくこの状態をいうのだろう。ケイネスに振るわれる喜悦の数々は暴力だ。蔦は獲物が陥落する瞬間を、虎視眈々と狙っている。態と陰唇には触れずに官能を刺激し、理性を自ずから手放ことを待っている。
ランサーが見ている前で、否、他人の目がなくともケイネス・エルメロイ・アーチボルトの誇りは魔性になど屈しない。達することを許されない、緩慢でありながら強烈な快感に晒されて、ケイネスは気が狂いそうだった。
見ていられない。
ランサーは両の拳を固く握りしめた。だが目を逸らすことは許されない。ランサーにとっても、これは拷問だった。
主たるケイネスが魔性に弄ばれている様を、指を咥えて見ているしかない。サーヴァントとして忠義を捧げる相手に無力な己を痛感し、打ちひしがれる。
――そんな感情を抱けていれば、どんなにか幸せだっただろうか。
ランサーの心に芽生えたのは、劣情だった。
サーヴァントに対し、令呪をかざしたマスターは絶対優位。特にその忠誠をランサーたるディルムッドはケイネスに捧げている。己が信ずる騎士の誇りに反しない限り、ランサーはマスターの命令に逆らうことはない。
それがどうだ。もはやケイネスはランサーがいなければ己が身も守れず、しかも魔性に身も心も蹂躙され、精神は擦り切れる寸前だ。
傲慢が美という形をとれば、紛れもなくケイネスであった。
それが愉悦を与えられ、プライドをずたずたに切り裂かれ、今目の前で最後の矜持を保っている。
ディルムッドは、まさにその様子に欲情していた。
見ていられないのは、醜悪すぎる己が心だ。反吐が出る。自分は忠節の騎士として、ケイネスに仕えるのではなかったか。マスターへ浅ましくも欲念を向けるとは何事だ。恥を知れ! そう叱咤しても、ランサーは胸に燻ぶる情念に渇きを覚えて仕方なかった。



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