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同人誌見本
Fate/Zero >
Delusion of jealousy
(2012/08/10)
ケイネス女体化+ソラウ男体化でディルケイ+ソラケイ ※性転換は先天性
ランサーの出現によって感情が芽生えたソラウは嫉妬に駆られ、本当に自分を愛しているならディルムッドの魅了にかかっても揺るがないことを証明してみせろとケイネスをけしかける。ディルムッドは主を苦しめるソラウにケイネスを預けてはおけないと「俺を愛して下さい」とケイネスに詰め寄る。ソラウを純粋に愛する心と、魅了でディルムットを愛してしまった心で、ケイネスが七転八倒する本編沿い昼ドランサー本。
【R18/A5/52P/¥500】書店:とらのあな・K-BOOKs
別に、僕はケイネスのことを好きではない。
かといって嫌いでもない。
より正確に言うならば、そもそも僕には感情が希薄だ。零といっても差し支えない。
魔術師の家に次男として、跡継ぎの予備として産まれた僕に、個や我は必要なかった。それだけのこと。その有り様に不満すらない。
家が、両親や兄が、周囲が、望むままに今まで振舞ってきた。魔術師の家の子として今まで散々繰り返されてきたように、僕は次代の魔術の発展のためにアーチボルトとの、一人娘たるケイネスとの婚約を呑んだ。
彼女を愛していなくても、僕はよき夫として役目を果たす自信があった。今まで予備として十二分に役立ってきたように、彼女を支え子を成し、根源に至る長い道のりのほんの一歩を進ませる。
だから、僕はとてもびっくりした。ケイネスが、僕を愛していたことに。
由緒ある魔術師の系統の跡取りが、恋愛で好き嫌いで感情で伴侶を決めるなんて。結果的にソフィアリ家とアーチボルト家の、両者の利害が一致した為僕らは晴れて婚約出来たが、もし僕がなんの魔術の素養もない人間だったら。ケイネスの夫として優秀な魔術師の子種を持たない人間だったら、彼女はどうしたのだろうか。
興味深い。
彼女は驚きを、僕に感情の波を立たせてくれた。怒って泣いて笑って喜んで、ケイネスは僕の前でとても沢山の感情を見せてくれる。僕の感情表現は中身を伴っていない。からっぽだ。だけど彼女といれば、僕はもっともっと心を揺すってもらえるかもしれない。
その予感は的中した。
冬木。ケイネスが聖杯戦争に向かった地で、僕は強烈な感情にまみえることが出来た。
ね、ケイネス。どうして気付かないんだい。
君が僕を見る。詩に読まれた恋する乙女の、まさにその瞳で僕を見る。熱い、熱い、焦がれる視線。その視線、そっくりそのままで君を見ているモノがいるよ。君が召喚し僕が魔力を供給するサーヴァントが、君を穢らわしい視線で汚しているよ。
君が僕といるだけで幸せだと感じているように、あいつも君といるだけで幸せだって思ってる。なのにさ、君達は幸せなのに、どうして僕だけこんなに胸が焼き鏝を当てられたように痛むんだい。意味もなく落ち着きがなくなって、視界に君とあれが話している姿が映るだけで、無性に怒鳴り散らしたくなる。
これが嫉妬というものだとすれば、僕は絶望するしかない。
だって、僕はあのサーヴァントだけに嫉妬しているんじゃないんだ。君にも嫉妬しているんだよ、ケイネス。僕が持っていないものを全部持っている君。君は僕のものなのに、僕は結局なあんにも持っちゃいない。
マスターの君と、魔力を供給する僕と、サーヴァント。
愛情を持つ君たちと、持たない僕。僕だけ仲間外れだ。
君を恨むよケイネス。よくも僕に夢を見せてくれたね。君を愛せると思わせてくれたね。結果は散々だ。僕は憎しみで心を揺さぶられている。君が与えてくれたのは醜い感情だった。
ああ、自分だってこんなのは言い掛かりも甚だしいと思うよ。でもね、僕は本当に、ここまで強く想ったことはないんだ。
産まれて初めて、こんなにも全てをかなぐり捨ててもいいと、理性さえ捻じ伏せる強烈な感情がこの胸で暴れて、逆らうことが出来ない。
君からサーヴァントを、サーヴァントから君を奪えと。
――君から僕を奪えと。

「どんなことがあっても僕を愛してくれるよね。どんなことをしても僕を愛してくれるよね。ケイネス?」



  1

冬木に渡り、英霊を召還して三日目。ホテルの貸し切ったフロアへ一通り工房を設営し終わり、来日前の準備も相まって久し振りにケイネスは一段落付けた。
そんな彼女をソラウは労って食事でもどうかと誘った。婚約者を心から慕うケイネスが断るはずもない。疲れはあったものの、彼の誘いだけで吹っ飛んだ。ドレスまでプレゼントされ、舞い上がりすぎてホテル最上階のレストランで振る舞われたディナーの味もほとんど覚えていない。ただ目の前に座るソラウが微笑みかけてくれるだけで、ケイネスの胸も腹も一杯になった。
しかし、そんなケイネスが危惧していたことが一点だけあった。それは、やはりというかなんというか、お互い婚約者として将来の夫婦として当然の、だが今の状況を鑑みて実行には多大な不安を伴うものだった。
部屋に戻った途端、成人男性の腕が背後から細い女の躯を抱きしめる。
「ケイネス、」
「ソラ、ウ…!」
耳元で、芳醇なワインの香りを残した吐息と共に名を呼ばれ、ケイネスは華奢な四肢を強ばらせた。
「ま、待ってくれソラウ」
「もう充分待たされた」
青年の手が、女の慎ましい胸の膨らみをやわやわと揉みしだく。言われた通り、ここ一月程二人は床を共にしていない。聖杯戦争中はセックス出来ないと、事前に断っておかなかったことをケイネスは後悔した。ソラウの反応が怖くて言い出せなかったこともある、が、自ら口にするのは憚られたし、彼が察してくれればと淡い期待を抱いた。己の見通しの甘さに、ケイネスはどうしようもなく苛立つ。相手がソラウでなければ、思い切り頬をはり倒されていただろう。
「だ、駄目だソラ…ひぅっ」
開いた胸元から手を入れられ、立ち上がりかけた乳頭を摘まれて、女は悲鳴とも喘ぎともつかない声を上げる。ケイネスの胸は小振りな為、デザイン的に品のよいすっきりとしたドレスを着用していた。露出している部分は少ないものの、普段はローブで堅牢に守られているだけに、鎖骨が見えている状態でも充分男の欲望を刺激する。
ソラウは抵抗しようとするケイネスの腕を両の脇でしっかり押さえ、刺激ですっかり固くなったそこをいじりながら耳朶を唇で弄ぶ。ぞくぞくと背筋を這う感覚に、ケイネスの抵抗は次第に弱々しくなっていく。とどめとばかりにソラウはスカートの下に腕を突っ込んだ。
「駄目? でも君の躯はそうは思ってないみたいだよ」
「はぅっ」
囁かれたと同時に、青年の手が足の付け根を暴いた。下着の上からではあったが、粘着質な感覚と音があからさまに突き付けられる。
「あんっ…ち、違…んんッ」
青年のしなやかな指先が湿ったショーツを滑る。指の腹で緩慢な刺激を与えられ、ケイネスはあえやかな拒否の悲鳴を上げる。
「そんなやらしい声で否定されても、逆に興奮しちゃうな」
「そん…な…!」
か細い絶望の声を漏らしたケイネスの頬を、涙が伝った。
――もし。ここで、あと一秒自分が我慢出来ていたら。ケイネスは酷く後悔する。
ソラウが拘束を解き涙を拭おうとしたのとほぼ同時。
(ランサー!)
ケイネスは、マスターの喚び声に応えたサーヴァントの逞しい腕の中にいた。
「おやめ下さい、ソラウ殿。主がこんなにも嫌がっているではありませんか」
「ケイネス、」
「ご、誤解だソラウ!」
ソラウはランサーを無視し、ケイネスに詰問した。
「君をいじめすぎてしまったことは反省し謝罪しよう。けれどサーヴァントを喚ぶなんてあんまりじゃないか。僕が嫌がる君を無理矢理抱くとでも、本当に思ったの」
「だ、だから違うんだ。ソラウが悪いんじゃない。あのままでは私の方が君にはしたなくも懇願しそうに、なって、しま、いそう、だった、か、ら……」
勢い反論したケイネスの口調が、途端に弱々しくなる。朱に染まった顔を、女は両手で覆った。それを見たソラウが、先ほどとは打って変わって柔らかな声音で誘う。
「おいで、ケイネス」
「あ、ソラ、ウ」
指の隙間から恐る恐る伺い見たソラウは、いつもの優しい笑みで手を差し伸べていた。
「僕の婚約者を離せ、ランサー」
魔力供給者の命令に、渋々といった体でサーヴァントはマスターを降ろす。ケイネスはおずおずとソラウに近付き、その手を取った。瞬間、きつく抱きしめられる。
「嬉しいことを言ってくれるね、ケイネス」
「っ、ソラウ!」
頬に、額に、鼻に、瞼に。ソラウはキスの雨を降らせる。
「ごめん、やっぱり気が変わった。君を抱くよ。僕が強引に押し倒したことにすれば君自身に言い訳も立つ。なにかあったら心配だっていうなら、外じゃなく同じ部屋にランサーを待機させておけばいい」
「そん、な」
「おやめ下さいソラウ殿! それでは主があまりにもおかわいそうです」
「黙れよサーヴァント。僕はケイネスと話してるんだ。そもそもおまえが出しゃばってこなければ、こんなことにはならなかったんだぞ」
「な、」
「ソラウッ。だから違うんだ、私がランサーに」
不肖のサーヴァントがこれ以上なにか言う前に。ケイネスが弁解しようとしたのを、聞きたくないとばかりにソラウは遮った。
「ケイネス、解かってよ。それが僕を傷付けてるって」
ランサーに向ける氷のような態度とはまったく違う。優しく、だが切実な訴えを宿した熱い吐露。
「君がこんなにも愛おしいのに、君を信じたいのに、怖くて怖くて堪らなくなる。僕のケイネスが、別の男なんかと繋がってるなんて。ね、ケイネス。君が逆の立場だったら耐えられる? 僕が君をほっぽって美人なサーヴァントと四六時中一緒にいたら。信じたいけど、心は悲鳴を上げている。そうだろう? 信じたいのに信じきれない自分が嫌になって、でもそんな汚い心を見せたくなくて、ぐっと押し込めて見守る。でも、ごめん。僕は君ほど出来た人間じゃない。我慢も限界だ。ケイネスには出来たかもしれないけど、僕には無理だった。もう耐えられない」
胸板に押しつけられるようにきつく抱きしめられて、ソラウの表情は見えない。だが絞り出された苦渋の声が、ケイネスの心を抉る。
「ソラウ……。すまなかった。君にそんなにつらい思いをさせていたなんて」
ケイネスは動かせる肘から下で婚約者を抱きしめ返した。気付かなかった己が恨めしい。今彼が感じている痛みを全て替わってあげたい、取り除いてあげたい。愛する者の苦悩を察することが出来なかった罪を、罰してもらいたい。
「嗚呼、ソラウどうしたら許してくれる? 君の為なら私はなんだってする。私が心の底から君を本当に愛していると、君だけを愛していると、どうしたら伝わる?」
ケイネスの問いかけにソラウは力を緩めた。お互い視線を合わせ、見つめ合う。思い詰めた青年の瞳は潤み、今にも泣き出しそうだった。こちらも同様だろうが、真に泣きたいのはきっと彼の方だ。自分が泣いてはいけない。
「じゃ、まずランサーを下がらせてもらえるかい」
「相解かった。私が喚ぶまで決して姿を現すな。霊体化し我々の話も行動も察知するな、ホテルの外にいろ」
「承知仕りました」
マスターから一瞥もされず下された命でも、サーヴァントは従うしかなかった。瞬時に部屋からランサーの気配が消える。
広大なホテルのリビングに二人きり。ランサーが去ったことで、女は青年の腕から放された。彼がどんなことをしてきても受け入れる覚悟はある。だが、同時にそれは甘い提案だったのかもしれないと、ケイネスは今更ながら後悔し始めていた。
「ね、僕の愛おしい婚約者殿、」
許してほしい、許してほしいがそれはソラウが納得しこちらの気持ちを信じてもらって初めて許されることを赦されるのだ。さきほどの言い方は随分身勝手な言い分に聞こえたかもしれない。違う、そうじゃない。自分はもっとソラウを想って、ただただ彼の苦痛を取り除きたいだけなのだと伝えなければ。
「ソラウ、」
「そこまで僕のことを本当に愛してるって言うなら、」
だが改めて呼びかけた言葉は遮ぎられた。
「魔力抵抗なしでディルムッドの顔を見てよ。ケイネス」
真の愛ならば、黒子の魅了なぞ恐るるに足らない。魅了されてもなお愛せるはずだと。
最愛の婚約者の唇からぶつけられた言葉の衝撃に、ケイネスは愕然とした。
「っ、」
ランサーを喚んでしまったことで、彼の最後の拠り所を壊してしまった――。
まさか、そんな。ソラウが、まがりなりにも魔導の世界に身を置く人間がそんなことを言うなんて。否、だからこそ言うのか。魅了は人の制御の及ばない神秘の力。真の愛など関係ない。言うなれば愛そのものの、根本の法則を歪める力なのだ。
「出来ないの?」
「解かった」
しかしケイネスは頷くしかなかった。
なればこそ。魅了に心を縛られようともソラウを変わらず愛していれば、もう二度と、絶対にソラウはこちらの愛を疑わない。確かにこれほど身の潔白を示す手段があるだろうか。
「ありがとう、ケイネス。嬉しいよ」
了承の言葉を受け取った相手の表情が瞬時に明るくなった。再び抱きしめてきた腕は優しく、額に落とされた口付けも慈しみに満ちている。
「わ、あ、ソラウ!?」
「安心して、サーヴァントの守りが薄い状態で抱きはしないよ。ただ、一緒に眠ることくらいは許して欲しいな」
約束の履行は明日の朝で。期限は僕が満足するまで。
抱き上げられ耳元に睦言の熱で吹き込まれた言葉は、酷く禍々しい。それでもソラウの心が軽くなればと願って、ケイネスは頷くと青年の首に手を回す。
「ケイネスはほんと軽いなあ」
「ソ、ソラウが望むならば太れるよう努力する」
「あは、そういう意味で言ったんじゃないけど、でも確かに君を抱きしめるたびに折れてしまいそうだとは思ってたからね。健康の為にもう少し太ろうか。と言っても贅肉じゃなくて筋肉をつけようね。僕は別に君がどんな姿形だろうと気にしないけど。健康は大事だよ」
同じ体型でも肉より筋肉のほうが重いし、基礎代謝もそれであがる。説明する青年の瞳からは、憂いが取り除かれていた。ソラウが笑って話しかけてくれるだけで、たったそれだけでケイネスの胸は喜びではちきれそうだった。
「解かった、さっそく明日から筋力の強化に励むとしよう」
「そして、元気な僕の子供を産んでね」
「う、うむ」
真っ赤になったケイネスを、ソラウは上機嫌で寝室まで運ぶ。抱かれはしなかったが、併設のバスルームで互いにシャワーを浴び終えると、ベットの中でソラウは至る所に口付けを施した。
婚約者の腕の中で、ケイネスは幸福と不安がぐしゃぐしゃになった小さな身体をすり寄せて眠った。


§   §   §


ランサーはケイネスのサーヴァントである。
いくら魔力を供給しているとはいえ、ソラウはマスターではない。ケイネスの命令が絶対だ。だが、それも時と場合による。
夜明けの空を眺めていたランサーの元へ、一匹の使い魔がやってきた。ケイネスではない。わざわざこんな回りくどいことをせずとも、マスターが喚べばサーヴァントに届く。だからこれはソラウであると瞬時に判断したランサーは、昨晩追い出されたリビングへと現界した。マスターが喚ぶまで姿を現さない命を受けていたが、昨日の事が事だ。
「いいよ、ここまでおいで」
常人ならば聞き取れないような限りなく呼吸に近い声でも、サーヴァントにはなんら問題はない。部屋の主の許可を得たランサーは、ソラウの寝室に現れる。
「久しぶりにゆっくり眠れてるからね、起こすのも可哀相だろ。疲れが取れるまでぐっすり出来るよう、少しだけ暗示をかけた」
青年の指が、婚約者の寝顔にかかった髪をそっとどかす。ソラウの言った通り、身動ぎもせずケイネスは眠り続けている。表情は穏やかで、愛らしいことこの上ない。
「だからといって、長くサーヴァントを放っておくのも危険だ。ケイネスの命令に背くことにはなるけど、君を喚ばせてもらったよ。ああ、怒られたら僕がちゃんと取りなすから。心配しないで」
「ありがとうございます」
主をより守れるならば。当人に叱責を受けてもソラウに便宜をはかってもらおうとは想わなかったが、ランサーは素直に感謝を述べた。
あの後、二人の間にどんなやり取りがあったかは知らない。だが、この様子ではきちんと仲直り出来たのだろう。女の首筋や、露わになった肩に残る情痕が生々しい。
知らず、ランサーは目を伏せ唇を噛みしめる。その様子にソラウが薄く笑みを浮かべた。
「それでね、いい機会だから言っておこうと思うんだけど」
ランサーは再び視線を上げる。その瞳を、ソラウは鋭く睨みつけた。
「彼女は僕のものだ。貴様がケイネスと言葉を交わすどころか見ることも不快だ。ただ想うということすら、僕は許せない。なあ、ディルムッド・オディナ。悲劇の英雄?」
主君の妻を奪った騎士。
真名を呼ばれたことで、それになぞらえてソラウはランサーがケイネスに懸想している事実を知っていると伝えた。
ランサーはすぐさま否定する。
「だからこそ! 我が悲願は今生こそ主となったお方に忠義を捧げ仕え尽きる事。主はなによりもソラウ殿を心より愛しておいでです。貴殿が心配なさるようなことは、絶対にございますまい」
「じゃあ、ケイネスが君を好きだといったらどうするんだい。主人に尽くすと言うなら、彼女の言う通りなんでもするんだろう。君が誓約によってグラニアと駆け落ちするしかなかったように、ケイネスには令呪だってある」
追及する青年の言葉に容赦はない。だがここで返答に窮してしまえば背信を疑われる。
「ありえません。私は、ソラウ殿を愛するケイネス殿を信じております。ソラウ殿こそ、そのように主の愛を愚弄されるような発言は慎んでいただきたい」
「はん、言うじゃないかサーヴァント」
真っ向から反論された上、諌言まで述べられてしまったソラウは、さも愉快そうに剣呑な含みを持たせた声音で言い放った。
「馬脚をあらわしたな、ディルムッド。おまえは自分の願いを叶える為ならばどんな手段も厭わない卑しい狗だ」
そんな事態はありえないと、状況だけを否定し、己が行動については否定しない。それはソラウの言葉を認めたも同じだ。
「しかもだ。主君に対して至上の忠誠を捧げたいが故、貴様は絶対してはならぬことをした! ケイネスへの想いは純粋なものじゃない」
「そのようなこと。指摘されるまでもなく、百も承知でございます」
マスターの婚約者に看過されても、サーヴァントは狼狽えなかった。揺るぎのない瞳で、嘲りを跳ね返す。
「さっき言った通り、我が主の心は貴女のものであると疑わない。だからこそ、俺は主をお慕い申し上げる」
「へえ、認めるんだ。結構。見直したよ不義の騎士。感謝しろ。飼い犬ごときが主人に懸想してることは、ケイネスに黙っておいてあげよう」
途端上機嫌となったソラウをランサーは訝しむ。いくらマスターの婚約者とはいえ、ケイネスへの昨夜の仕打ちは腹に据えかねていたのだ。ソラウの性格ならば、ここで逆上されてある程度の打擲も覚悟していた。
だが、彼は言いたいことも言い終わったしまた後で呼ぶと退出を命じられ、ランサーはそのまま現界を解く他ならなくなった。
ランサーのいなくなった部屋で、ソラウは隣に眠る婚約者を撫でながらほくそ笑む。なんて馬鹿なサーヴァントだろう。甘美な絶望の支度は整った。声には出さず、青年は唇を動かしその蜜を掬う。
「だって。ケイネスが知らないほうが、面白いじゃないか」



  2

ケイネスが目覚めると、ベッドはおろか寝室にもソラウの姿はなかった。時計を見ればブランチすら遅い。完璧にランチだ。
「寝坊した!」
完全に覚醒したケイネスは飛び起きる。大変だ。ランサーを召還してから、こんなに長時間サーヴァントと離れていたことはなかった。
「ランサー!!」
「は、ここに」
喚べば、瞬時にサーヴァントが現界した。
「ソラウは無事か!? 何か変わったことはっ」
「ご安心下さい、ソラウ様はご無事ですし、何も異変はございません」
「そ、そうかよかった」
「恐れながら。実は朝、まだ主がお眠りあそばされていた時分、ソラウ様が一度私を喚び戻しておいでです。ケイネス殿の心行くまでの睡眠を危険が及ぶことのないようにと、ソラウ様のお心遣いです」
「なんと、そうであったか」
常ならば、いくらマスターのためとはいえ命令違反を犯したとなればランサーは叱責される。だが婚約者の名は効果覿面で、ケイネスはそっと頬を色付かせてランサーの違背を許した。だが、同時に昨夜の彼との約束を思い出し、ケイネスは胸が締め付けられる。
「ソラウ……」
ディルムッドはサーヴァントらしく跪いている。故にその魅了は今のところケイネスには届いていない。それにケイネスの服装は、シルクのスリップ一枚。とてもランサーが面を上げるとは思えない。
「着替える。仕度が終わったら呼ぶ」
「は、それが主。テーブルにソラウ様が新しいお召し物をご用意しておいでです」
「なに、」
とりあえず先延ばしに出来た安堵に浸る暇すらなかった。ケイネスはランサーの言葉を受けてベッドを下りる。
「まず顔を洗って来る。待っていろ」
「かしこまりました」
ケイネスは併設のバスルームで洗顔すると、寝室に戻り重い足取りでテーブルに近付く。
ソラウがプレゼントしてくれたというのに、こんなにも暗澹たる気持ちになるなんて。昨日はあんなに嬉しかったのに。きっとこれが彼の作戦なのだと、解りたくなくて延ばす手はのろく、泥を掻き分けるよう。
箱は二つ。リボンが巻かれ華やかなラッピングが施されている。女は緩慢な手つきで包装を解く。一つ目の中身は靴。あまり踵の高くない、落ち着いたシルバーのパンプス。アクセントの花のコサージュが足首のストラップに咲いている。
そして、二つ目の中身。
「この、服、は……」
「はい、ですからソラウ様が主を労って、今まで根を詰められていたのだからと、それを着てお出かけになられてはどうかと、」
「そうではなく……っ」
振り向くと、ランサーは立ち上がっていたが頭を垂れたまま。ランサーはせっぱ詰まった言葉を受けても、頑としてこちらを見ようとはしない。それはそれで失礼ではないかとケイネスは内心むっとする。
「ケイネス殿、いかがなされました」
それでも愛してやまない婚約者からのプレゼントにいつまでたっても喜ぶ様子を見せないマスターに、ようやくランサーは異常を察知する。
「ランサー」
「はい」
「このワンピース、一人で着ることは出来ぬ」
「は?」
「手伝え」
「なっ。それは……そんな、いくら主の頼みでも……今回はソラウ様に、」
「ソラウに使用人の真似事をしろと言うのか」
案の定慌てたサーヴァントにケイネスは詰め寄る。
ケイネスの言葉と表情はばらばらだ。ランサーが見ていないから、いつもと同じきつい口調で喋れる。顔は、今にも泣き出しそうなのに。
(ソラウ……そこまで念を入れるなんて)
女は歯を食いしばり、覚悟を決める。彼への愛を証明するためならば、どんな試練も乗り越えてみせる。
ケイネスは魔力抵抗を捨て去った。
「いいからっ」
声をあらげると、ランサーの肩がびくりと震えた。
「許す。私を見ろ、服を着せろ、ランサー」
「か、かしこまりました」
有無を言わさない口調に、やっとランサーは面を上げた。
ゆっくりと露わになるその、魔貌が。ケイネスの視線を思考を理性を、絡め取る。釘付けにする。
「――ッ!」
ケイネスは悲鳴を飲み込んだ。
電撃に貫かれたようなどと、そんな表現では足りない。灼熱の奔流に一気に浚われる、天空から一瞬で地上に突き落とされる。圧倒的な力に屈服させられる。
知らない。こんな感覚は知らない。
心に決めた人がいるのに。彼しか愛したくないのに。そこへ無理矢理割り込まれて、肥大した心が破裂しそうだ。
「あ、う……」
「主!?」
膝から崩れ落ちそうになったケイネスを、ランサーは支える。
「顔が赤いですよ、熱があるのでは」
「大事ない。ふらついたのは寝ぼけているからだろう。それから私の顔の皮膚の血行が促進させられている理由は、ソラウ以外に寝間着をさらしているからだ、言わせるな馬鹿者」
「も、申し訳ございません」
「ふん」
ケイネスは乱暴にランサーの手を払った。その、触れた指先にすら熱が灯って鼓動が速まる。
(ソラウと、同じ……)
ケイネスは指先を手のひらで包む。昔、まだソラウと出会ったばかりのころは、こうして偶発的に触れただけでも皮膚が熱く感じた。同じ場所にいるだけで、見つめられるだけで、声をかけられるだけで、血液が沸騰して爆発してしまわないのが不思議なくらいだった。
「ケイネス殿?」
握り拳を胸に抱いて黙り込んだ主人を案じ、ランサーが声をかけた。
「な、なんでもない!」
心配されて嬉しいなど。ケイネスは首を振ると勢いスリップを脱ぎ捨てた。ショーツ一枚の姿に、案の定ランサーは目をまん丸にして凍り付いている。ざまをみろ。
「なにをぼさっとしている。早く服を着せぬか」
「かしこまりましたッ」
我に返ったランサーが、大慌てでワンピースを手に取る。後ろが全て編み上げになったクラシカルなものだ。紐を緩めたランサーが、主人の頭からワンピースを被せる。ケイネスは顔と手を出し、ランサーが紐を締めていくのをただ待った。
「苦しくありませんか」
「問題ない」
嘘だ。早鐘を打つ心臓が苦しい。この鼓動を止めるほど、きつく絞り上げてほしかった。
ワンピースは袖以外の上半身の部分はコルセット状になっており、殊更女の華奢な四肢が強調される。大きく開いた胸ぐりは、コルセットが支えるおかげで実物より華々しく盛り上がった乳房が谷間を形成していた。
「上着を」
「うむ」
最後にボレロに袖を通される。日本では現代から浮いた服装だったワンピースが、ボレロのおかげで緩和された。これなら外を歩くのに支障はないが、それはイギリス人であるケイネスが着ているからであって、日本人が同じ格好をすれば奇異の目で見られただろう。もっとも、目立つという点では変わらないが。なにせ金髪碧眼の美女だ。注目されないはずがない。
「ソラウ殿はもう昼食を召し上がっておいでです。ケイネス殿はいかがなされますか」
「ソラウが言った通り外に出る、貴様も来い。そこで食べるとしよう。先に彼へそう伝えておいてくれ。まだ化粧をしていない」
「承知いたしました」
一礼したサーヴァントが消える。ケイネスは床にへたり込んだ。今更になって羞恥がこみ上げる。穴があったら埋まりたい。ランサーにはしたない主だと軽蔑されたりしないだろうか。ランサーに粗末な身体だと思われたかもしれない。ランサーに嫌われたくない。そんな想いが胸を潰す。
なんということだろう。この心を今満たしているのはソラウではない。ランサーだ。サーヴァントと出掛けられることに心を躍らせている。許せない。そんな自分は許せない。
呪いのせいでも、ソラウ以外を想う己が許せない。否、呪いのせいだと言い訳をしたくないのだ。それは呪いだからランサーを愛したことを否定したくないからか。呪いという責任転嫁でソラウ以外を愛したことに罪悪を募らせないための行為を正当化させないようにするからか。あるいは両方かもしれない。心が二つに引き裂かれて、悲鳴を上げている。頬を熱い滴が伝った。
嗚呼、それでも。
よかった、二つの心とはつまりそれでも己はソラウを愛しているのだ。愛しているからこそつらいのだ。
ケイネスは立ち上がると自分の部屋へ足を向ける。気付いた事実は勇気をもたらして女の背を押す。化粧をすれば、泣くことは出来ない。もう泣かない。しっかりとした足取りでケイネスは部屋に戻ると、女の武装を施した。
化粧は魔術だ。証拠に、リビングに戻ったとき待っていたランサーを見ても、先程のように酷く煩いはしなかった。驚きはしたが。
「ソラウ、ランサーのその格好は」
リビングには間の悪いことに昼食から戻ったソラウと、スーツを纏ったランサーがいた。
「ケイネス、まさか霊体化したままランサーを連れて行くつもりだったの?」
「う……」
こうならないよう、ソラウが戻らないうちにこっそりと出て行ってしまいたかったのだ。ちょうど昼食に出たというからその隙にと狙っていたのに、思いの外落ち込んでいた時間が長かったらしい。
「駄目だよ、見かけ上君一人だなんて。ナンパでもされたら心配だ」
「しかしランサーはランサーで面倒なことになるのではないか」
「大丈夫、この姿ならどう見てもお嬢様とSPだ。いくらディルムッドの魔貌といっても、肝の小さい日本人がちょっかいかけて来ると思う? それにこんなに愛らしい連れがいるんだよ? 君に勝てると思ってランサーに声をかける女なんかいないさ。ケイネスが一番さ。な、ランサー?」
「もちろんです」
「解かった」
ケイネスはしぶしぶ承諾した。黒子の呪いに日本人の性質など関係ない。しかしなんであれ、ソラウはランサーと外出させたいのだ。反論は無駄だ。ランサーの自信たっぷりに頷く姿だけは腹が立つ。同時に嬉しいとも思うから、余計そう感じる。
本当は、ソラウと出掛けたいのに。しかしいかなランサーとはいえ、同時に二人を守ることは難しい。魔力を供給するソラウは、この厳重な結界の中にいてもらうことが最も安全なのだ。
「いいこだね、ケイネス。それにその服、とっても似合ってるよ」
「ありがとう」
ソラウに頭を撫でられ、ケイネスは頬を赤らめる。ソラウはケイネスがランサーに肌を見せたことを知っていて似合うと言う。それでもケイネスは嬉しかった。ソラウへの愛の為に意に添わない行動も我慢した。それを誉められているのだ。喜ばないわけがない。
「では行って来る。日付が変わるまでには戻る」
「うん、いってらっしゃいケイネス。ランサー、僕の婚約者殿を頼んだよ。命に替えても守り通せ」
「御意」
ケイネスは後ろ髪を引かれる思いでフロアを後にした。





「満足ですか」
「まさか。」
怒りを押し殺した声に、感情を排した声が答えた。
赤い髪の男は無惨な姿になった婚約者を見下ろしていた。その頬に、一筋。一度道が出来てしまえば、止めどなく。
「ランサー」
「はい」
「おまえの企みも終わりだ。ケイネスの令呪を全て消費させて、僕を殺しても彼女はおまえのものにはならない」
「魂喰いで魔力を補うという選択肢もありますよ。受肉すれば意味もなくなる」
「でも、おまえはそうはしない。聖杯はケイネスを元の身体に戻す」
「そうですね」
「はは、やっぱりまだ分別は残っているんだな。馬鹿だなぁ、ケイネスさえ手に入れば、手段を選ばないくらい言ってくれないと、僕の張り合いがないよ」
「私の望みは、今生の主に忠義を捧げることです」
「……二人きりにしてくれ」
初めて感情の滲んだソラウの言葉を受けて、素直にサーヴァントは消えた。このままだと、もう二度とランサーはケイネスの前で実体化しないだろう。魔術回路が破壊され、魔力抵抗もない。ただの人間になってしまったケイネスに、ランサーの魅了に抗う術はない。
ソラウは婚約者の頬に手を添えた。冷たい。生きているのが不思議なくらいだ。奇跡といっていい。その奇跡に、心の底から感謝する。
感情が揺さぶられる。本物の涙が溢れる。
「馬鹿なサーヴァント。こんな結果で僕が満足するはず、ないだろう?」
声を出したら、嗚咽が止まらなくなった。
やっぱり感情をくれるのはケイネスだ。
嘘泣きでない涙なんて、初めて零した。
「まだまだだ。どう奪おうか思案していた魔術師としてのケイネスが奪われたおかげでだいぶ無くなったけど、ケイネスから奪う物は沢山残っているよ。そう、だから張り合う他無いように仕向けないと。ね、ディルムッド」
それには君から君の願いを奪わなければ。
嬉しくて嬉しくて、嬉しいという感情を感じられることが嬉しくて、男は流れるまま涙を流し続けた。


§   §   §


目覚めた瞬間、眼前には泣き腫らした婚約者の顔があった。おかげで、ケイネスは一人であったなら激しく取り乱していたであろう事態を回避した。
「ケイネス、ケイネス酷いよこんな。許せない……許せないッ」
頭を撫でてやりたいのに、どこもかしこも身体を動かすことが一切出来ない。感覚すらない。
しかし、ソラウよりもよほど泣きたい気分であるはずが、ケイネスは至極心が軽かった。この心にはソラウしかいない。ランサーを想う感情など一欠片もない。
「ソラウ、」
君さえいればなにもいらない。自分が持っているものは全て失ってしまった。このままでは君を守れない。
だからもう、帰ろう。
そう続けようとした言葉は、相手の思いもよらない提案に掻き消された。
「ケイネス、僕に令呪を譲って」
「なっ」
「僕が聖杯をとる。そしてケイネスを元の姿に戻す。君をこんな姿にした奴を、僕は絶対に絶対に許さない! だから令呪を譲って」
「ソラウ……」
「君が駄目だって言っても、腕を切り取ってでも貰うよ。聖杯に頼めば元に戻るもの」
婚約者の言動に本気を見て取ったケイネスは頷くしかなかった。言葉では説得出来ない。身体も動かない。選択肢はない。この場は彼の意見に賛同するしかない。
「解かった。令呪を譲る」
「ありがとう!」
「その代わりと言ってはなんだが、私の願いも聞き届けてはくれないか」
歓喜するソラウを宥めるように、ケイネスは言った。
「日本に腕の良い人形師がいる。彼女へ私の身体の代わりを大至急手配してくれ」
「解かった」
令呪を委譲しても、身体さえ動けばソラウの暴走も止められるだろう。――そんな認識の甘さを、ケイネスはすぐに身を持って知ることになった。



「これでよし。大丈夫だよ。おいで、ランサー」
ケイネスの目を覆うように包帯を巻き、魅了封じの術を施したソラウは、サーヴァントを呼んだ。
「ケイネスから令呪を委譲してもらった。僕が仮のマスターとなりおまえを使役し、聖杯を手に入れケイネスの身体を元に戻す。異論はないな」
「あるはずも御座いません」
車椅子に腰掛けていたケイネスは、声のする方向に顔を向けた。もちろん目隠しをされているため、ランサーの顔は見えない。
「ソラウを守ってやってくれ」
「かしこまりました、我が主よ」
「ケイネスの身体なんだけど、急すぎて足まで手に入れられなくてね、それ以外は――回路と刻印以外は元通りだから」
二人の間に割り込むようにソラウが言った。
「はい、必ずや聖杯を手に入れ、ケイネス殿の身体を魔術師として取り戻してみせます」
「うん、そういうことだ」
物解かりが良くて嬉しいよ。
ケイネスの耳に、ソラウの笑う声が届く。目が覚めてから一度も明るい表情を見せていなかった彼が、ようやく笑ってくれて、ケイネスは安堵した。
「令呪を以って命ずる。ランサーはソラウ・ヌァザレ・ソフィアリに一切危害を加えてはならず、守らねばならない」
「ソラウ……?」
だから、あまりにも会話の続きのように彼が発した言葉が自然すぎて、ケイネスは事態の把握が遅れた。
いくら確執のあった二人とはいえ、わざわざ令呪を消費することなのだろうか。
だが、次のソラウの言葉に、ケイネスは命令の真意を知った。
「令呪を以って命ずる。ランサー、ケイネスを犯せ。しかし彼女に魅了を用いることは許さない」
命令の真意を知っても、彼がその命令を下した理由が解からず、ケイネスは叫ぶ。
「ソラウ、どうして!?」
「あは、質問する暇なんてあるのかな? 早く逃げないとランサーに強姦されちゃうよ」
「っぐ、あ……お逃げ下さい、主……!」
ソラウの言葉通り、ランサーが抵抗出来たのはほんの数秒ほど。
「ひ……っ」
閉ざされた視界ではどうすることも出来ず、ケイネスは容易く床に引きずり降ろされた。
「やめ、やめろランサー」
「主、申し訳ありません主……!」
覆い被さるランサーを押し留めようとするが、サーヴァントに女の細腕が適うはずもない。
「なんだよ、もっと喜べばいいだろディルムッド。ようやく愛おしいご主人様を手に入れられるんだからさぁ」
「きっさ、まァ…!」
しゃがみこんで二人を観察するような目で見るソラウに、ランサーは怨嗟を込めて睨み付ける。だが抵抗など無駄なのだ。その手は組み敷いた女の被服を暴き、皮膚を撫でる。


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