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同人誌見本
TIGER & BUNNY > 兎虎 >
あたしのエロパロ動画見た相棒が「あなたじゃないと否定するなら証拠見せてください」って詰め寄ってきた。
(2011/08/28)
タイトル通りの内容。 兎が残念なイケメン童貞でどうしよう。バニーちゃんのむっつり妄想話。
【R18/A5/28P/¥300】- 書店:とらのあな


バーナビー・ブルックスJr.はモニタに映しだされた映像と文字に釘付けになっていた。
スクロールしていたマウスの指を止め、何度も何度もその文字を読み返す。信じられるわけがない。だが何度読み返したところで、文字列は消えもしなければ変化もしない。

『正義の壊し屋、ついに年貢の納め時!?! ワイルドタイガー凌辱祭!!!』

バーナビーは震える指先でその文字を――リンクをクリックする。切り替わった画面には動画のサムネイルとダウンロードボタン、そして卑猥な説明文。アダルトサイトではない。ファイル共有サイトのページだ。
『正義の壊し屋ワイルドタイガー、ついに年貢の納め時!?
賠償金が積もり積もったヒーローの行きつく先は、スポンサーとの枕営業だった!
賠償金まみれなタイガーの、むちむちボディにスポンサー様のザーメンがほとばしる! 破けたぴちぴちのヒーロースーツから、豊満な彼女の肉体が覗く姿はなんとも煽情的!
生ハメファックで喘ぎよがるタイガー丸ごと百二十分大放出!!!』
遠慮ない破壊行動、イコール賠償金、イコール枕。筋立てとしてはしごく説得力がある。いや、ありすぎて困る。
サムネイルはTOP MAG時代の旧スーツであられもなく股を開いているものだ。体型も、顔の輪郭も虎徹本人に良く似ている。きちんと別人かどうかは動画を見てみないと確証をえられないくらいに。
これが、もしただのアダルトサイトに置かれているものだったらまだ安心できた。よくあるヒーロー凌辱モノだと。
だが、こんな、普通に検索をかけただけでは引っかからないようなアングラ情報がひしめく場所に置かれていると、ひょっとして本人の流出映像ではないかと勘繰ってしまう。
ウロボロスについて調べるために、バーナビーはこうして非正規情報を漁ることもある。
もしもこれが虎徹本人だとしたら大事件だ。明るみにでもでたらヒーロー生命に関わる、もちろん、コンビであるバーナビーもとばっちりをくらうだろう。
「まったく、なんてことしてくれるんですか。おばさん」
サイト自体のセキリティチェックを完了して、バーナビーはダウンロードボタンを押した。アッパークラスマンションの高速回線は動画の重量などものともせず、すぐに保存が完了する。データ自体の安全も確認して、バーナビーは動画を再生した。
黒塗りの画面、砂嵐の雑音が数秒して、突然豪奢なベッドルームが映った。キングサイズのベッドには、所在なさそうにぺたりと座るワイルドタイガー。
アダルト動画をほとんど見たことのないバーナビーであったが、きちんとした設備で撮影されても編集されてもいない映像だということはわかった。ますます怪しい。
画面はタイガーにクローズアップする。不安そうな表情でカメラを見る彼女の髪は短い。少なくともヒーローデビューから五年間は髪が長かったと記憶しているので、MVPから転がり落ちた後というわけだ。
「待てよ、五年って」
その数字に引っ掛かりを覚えて、バーナビーは記憶を反芻する。
『あー、五年前に病気でね』
思い出した。彼女の夫が亡くなった年だ。
結婚していたのはなんとなく指輪で察していたが、その割には家庭の匂いがしないので不思議だったのだ。まさか子供がおり夫に先立たれているとは思いもしなかったので、市長の息子を預かったときに聞いて驚いたものだ。もちろんおくびにも顔には出さなかったが。
そして、もう一つ浮かび上がった事実にバーナビーは顔をしかめた。
髪を切った時期。
彼女がMVPから転落した時期。
夫が亡くなった時期。
五年前で全て符合し、こうして彼女は賠償金を躰で支払うまでに堕ちた。
苛立ちは、今気付いた結論に対してではない、今まで気づけなかった己へだ。
「くそ……っ」
バーナビーらしくもなく悪態をついて、頭を振ると動画に集中する。
『あの、本当にこれで賠償金の件、チャラにしてくれるんですよ、ね』
カメラに映されるタイガーの声が震えている。よく似た声だった。しなやかな体躯と、胸元で握りしめた拳。ひどく男をそそる。
そのタイガーの座る寝台の周囲には、複数の全裸の男たちがいて、みな目元を隠しており身元は不明だ。まあ、あのタイガーの破壊したものをチャラにできるスポンサーだ、身元が割れてはタイガー以上に困るだろう。
『大丈夫だ、きちんと書類にサインしただろう』
聞き覚えのない声だ。少なくともバーナビーは自分の知り合いの要人ではないと判断した。他の男共も、見覚えはない。その事実に安堵したことに、バーナビーはますます苛立った。
もし、もし知り合いがいたら? そいつになにをするかわかったものではないと考えてしまった自分に混乱する。
この気持ちが恋だなんて、幸せな気持ちであれば。
恋なんてしたことはないが、この気持ちは恋なんかじゃないと断言できる。虎徹のことを考えても温かい気持ちになどならない。焼き切れるような焦燥しか抱かない。胸が苦しい、吐き気がする。イライラする、腹立たしい。傍にいて落ち着かない、自分がなにをしでかすかわからない。
そう、自分が制御できないことが一番恐ろしい。
己の行動のタガを外させる存在として、バーナビーは虎徹を恐れている。
気付けば目で追っている、虎徹の唇や指先や時折覗くうなじや、深い琥珀色の瞳。すらりとタイトスカートから伸びた脚、まろやかな臀部、引き締まったウエスト、豊満な乳房、笑顔と共に屈託なく差し伸べる腕、細い手首と指と――指輪。
あんまりにもムカつくので、めちゃめちゃにしてしまいたくなる。
もし、もしもこれがまさか恋であるというならば、なんてキタナイ感情だ。バーナビーは、それこそ自分に怒り嫌悪した。
動画の中のタイガーは、まだおどおどとベッドの上でスポンサーになにか言っている。スポンサーの受け答え、下卑た笑い声、不愉快極まりない。
金銭をタテに女性に股を開かせるなんて、最低だと思うと同時に、彼女に対して抱いた己が劣情もあの浅ましい男共と同種なのだと気づき、はらわたが煮えくり返る。
『どうか、あたしにスポンサー様の慈悲をお恵みください』
画面のタイガーはゆっくりと膝を抱え、大きく開脚していた。震える躰に、誰かが喉を鳴らした音が聞こえる。男共の手が伸びて、さっそくタイガーに半勃ち状態のペニスを掴ませた。
『うっ、ぅ』
タイガーの口からすすり泣くような声が漏れた。両手に掴んだグロテスクな男根を、唇を噛みしめながらしごいている。
『ほらタイガー、こっちも開いているだろう』
『んぶぅ…ッ』
カメラが寄って、無理矢理男根を咥えさせられたタイガーが映された。だがアップになっても、歪んだ表情からは虎徹かどうか判断しづらい。
『あっ…ぉご…っふぐぅッ』
苦しそうなタイガーの声に、バーナビーは知らず知らず拳を握りしめ唇を噛んでいた。
だが、どうだ。
『が、ぁ…っあ、んぐ』
自分の雄はしっかり反応し、あからさまにズボンを押し上げているではないか。
『さあタイガー、だすからしっかり飲むんだよ』
はあはあと汚らしく荒い息を吐きながら、タイガーに口淫させていた男が言った。
『んっ、ふ…ぅぐッッッ』
タイガーの薄い琥珀色の瞳が見開かれて、彼女の口から汚らしい白濁が漏れた。
『が、は…うっ、うぅ』
『ああ、駄目じゃないかきちんと飲まないと。お仕置きが必要だねえ』
『も、もうしわけございません』
えづいて苦しかったのだろう、涙に濡れた瞳を揺らしながらタイガーが謝罪する。飲み込めなかった精液を顎からだらだらこぼして、それが見事に張り出た胸に、いやらしい染みを作っていく。
――限界だ。
バーナビーはベルトを緩め前をくつろげると勃起したペニスに指を絡めた。
恐怖と嫌悪に歪んだタイガーの表情は、元々彼女へ持っていたバーナビーの嗜虐心を煽った。彼女をめちゃくちゃにしてしまいたいという妄想に、まさにぴったりとはまりこんだ。
『まてまて。その前にタイガー、こっちもちゃんとイかせなさい』
『は、はい』
タイガーに手でしごかせていた男が言った。彼女は健気に両手に握る赤黒い肉塊をしごいた。
『ひぃ…ッ』
男二人のはぜた欲望が、タイガーの顔にぶちまけられる。べっとりとした濃い精子が、タイガーの涙と唾液と共に彼女の顔を穢した。
『なんてことだろうねえ。こんなに初々しい反応をしているというのに、君のここはもうじっとり濡れているみたいじゃないか』
『あっ、ち、違』
口淫させていた男が、タイガーの股間を指さす。カメラがズームになり、黒のレオタードに愛液が染み出てさらに黒さを増した箇所を映した。
『どうやら遠慮はいらないようだねえ』
もともと遠慮など微塵もする気がなかっただろうに。男は怯えるタイガーのレオタードに手をかける。
『や…いやああああ』
タイガーの悲鳴と被って、布が裂かれた悲鳴がスピーカーを揺らした。画面にぱっくりと開いたタイガーの、桃色の肉襞が映される。てらてらと蜜をたらし、ときおりひくりと震える。そこに男の無骨な指が無遠慮に挿し入れられた。
『ひぃんッ』
びくりとタイガーの躯が跳ねる。
『あっあっん、や、だめぇ…そっこはぁ…』
クリトリスを責めると、途端にタイガーの声が甘さを増した。ぶちゅぶちゅと漏れ出る蜜が音を立ててタイガーの興奮を代弁する。
『あ、っあ…んはっ、や、そこぉ』
さっきまでの引きつっていた表情はどこへやら。タイガーの瞳はとろりと愉悦に浸かり、艶やかな嬌声を濡れた唇から垂れ流している。
『ぃひっ、く、あぁっあ、いくぅッ、いく、も、いっちゃうううう!』
びゅくびゅくと潮を吹いて、タイガーは達した。焦点の合わない呆けた表情。それが、急に崩壊した。
『ひぎっ、そ、な…あああ、いきなりぃ』
カメラが引き、タイガーが男に赤黒いペニスを根元まで捻じ込まれている様子が映った。我も我もと他の男共も続き、タイガーの口や、手を使って欲望を満たさせようとする。混ざれない男達は、ペニスをしごき射精した精液を青いスーツにぶちまけた。
『らめぇ、そんっな…壊れちゃううう』
よってたかって男共にいいようにされているというのに、タイガーは表情も、声も、躯も、いやらしく乱れていた。
『あんんっ、もっと奥…ひいっ、はひいい、あ、そこいい…あ、アーッ』
あ。チガウ。
『はああ、しゅごいのおおお、おちんぽが子宮がつがつしてるうう、ここにぃ、スポンサー様のおちんぽみるくぶちまけてくだしゃいいい!!!』
コレ、虎徹さんじゃない。
『あっ、アアァア、イぐ、イちゃ…あぁあああッァァ』
バーナビーは自身を慰めていた手を離して、動画の停止ボタンを押した。
さっきまであんなにガチガチだったのに、ソッコー萎えた。とりあえずティッシュ二枚で先走りを拭う。
「馬鹿みたいだ」
大きく嘆息して、バーナビーはティッシュをゴミ箱へほうる。きれいな放物線を描いてダストシュート。
シーケンスバーを最後のあたりまで動かすと、案の定きちんとスタッフロールと制作会社がでた。画像の安っぽさは盗撮ものらしい臨場感を持たせる効果というわけか。
安心はした。が、ひどく虚しい。
確かにこの動画は偽物、というか、ただのヒーローモノAVだった。取り越し苦労もいいところだ。
けれども、もし、もしも。
映像には残されていないが、虎徹が枕営業をさせられていたとしたら。考えてもいなかった疑念がバーナビーの心をどす黒く染めていく。
虎徹には子供がいる。
少なくとも最低一人はあの人を抱いたのだ。
それだけでバーナビーは憤慨した。顔も知らない、見たこともない、死んだ人間に嫉妬した。自分の知らない虎徹の姿を見て、触って、味わった男の存在を疎ましく思った。枕営業をしていたというのなら、そのスポンサーを社会的に葬ってやりたくなった。
自分が必至で親の仇を、ウロボロスを探しているときに、あの躰をいいようにしていたのかと思うと、いてもたってもいられなくなった。逆恨みもいいところだが。
こんなただれた感情が恋であってたまるものか、ただの衝動、欲望だ。胸くそ悪い。
けれども、今回の件ではっきりとわかったことは、わかってしまったことは一つ。

俺は、どうしてもあの人が欲しい。




「バニーちゃん、おっはよ〜ん」
「おはようございます」
あとバニーじゃなくてバーナビーです。
お決まりのやりとりをして、いつもの朝を迎える。一つ違うことは、バーナビーは虎徹の顔をまともに見ようとしていないことだった。
「あれれ〜、どったのバニーちゃん」
なんか具合でも悪い?
虎徹が左背後から、バーナビーの顔を覗き込むようにしてきた。むちゃくちゃ近い、息が、頬にかかる。
「っ、なんでもありません」
右側を向くと、左の頬をつんつんと指先がつついた。
「嘘だあ。あたしにはわかるもんねー、バニーちゃんいつもとちょっと違う」
なんでもない、返答としては一番不適格だ。なにかありますと答えたも同然。
(おばさんは鈍感なくせに、こういう機微には聡い)
バーナビーは振り払うように虎徹の指を追いやる。
「なによう、邪険にしちゃって。あたしの顔、一度も見てないし。バニーちゃんわっかりやすうー」
それじゃあ、いかにもなにかありましたって言ってるようなもんじゃん。
虎徹の言葉にバーナビーは珍しく返答に詰まった様子を見せた。しばしの沈黙ののち、ため息を一つ。
「おばさん、今日仕事終わったらうちに来られますか」
「うん、いいよ。まったく、素直に最初からそう言ってくれればいいのに」
なになに相談? 人生の大先輩に任せなさい、と虎徹は胸を張った。バーナビーが最近少しずつ打ち解けてきてくれているのが相当嬉しいらしい。
鼻歌でも歌いださんばかりのご機嫌具合でデスクに座った虎徹を横目で見て、バーナビーは口元を歪ませた。
ああ、ちょろい。


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