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2011/10/11
ガイアスがミラを嫁に欲しいとか言い出したので、ジュードとウィンガルが結託して邪魔しようとする話。
ジュード→←ミラ←ガイアス←ウィンガル。キャラ崩壊ってレベルじゃない。ガイアスとウィンガルが酷いあて馬。みんな(ウィンガル以外)ミラ様が大好き。アル憫。ごめん、ガイアスでるとどうしてもギャグ無理。
[ 初出:『Distribution of Mementos.20』2010/10/09 コピー 20P 無配 ]
バランのマンションに来客のチャイムが鳴ったので、玄関を開けたらウィンガルがいた。なんて、普通予想できない。
「バランさんは留守なのでお引き取り下さい。じゃ」
「まて、アルヴィン。私はマクスェルに用があるのだ、扉を閉めるな」
あと三センチの隙間に足先を突っ込まれた。
「ミラ様もいませーん」
「勘違いするな、私は話し合いに来たのだ」
でなかったら扉ごと粉砕している。もっともなことを言ったウィンガルだったが、アルヴィンがそれでほいほいと入室を許可するはずがない。
「ぐぁっ、きっさま……!」
ぎりぎりと足を挟む扉に力をこめる。ウィンガルは苦痛に顔を歪めるが、しかし手を出そうとはしない。まさか、本当に話し合いにきたというのか。
「よし。」
抵抗できないと知って、アルヴィンはますますウィンガルの脚を挟む扉に力をこめる。
「ヤイオ エディン ディオドゥン!」
ウィンガルはとうとう堪忍袋の緒が切れたのか叫んだが、ロンダウ語だったのでアルヴィンにはさっぱりわからない。まぁ、とりあえず悪口だったというのは理解したが。
「どうしました」
「あ、じーさん。なんかウィンガルが来たから咄嗟に扉閉めたら、足はさんじまって。力入れたら罵られた」
「『失礼なやつめ!』ってところでしたね。ロンダウ語が聞こえたのでまさかと思ってみにきたら……おやおや」
扉の隙間から、ウィンガルが射殺しそうな目でにらんでいるが、ローエンは扉を破壊しないことと、先ほどのロンダウ語からこの参謀が話し合いに来たのだと見当をつけた。
「アルヴィンさん、意地悪をしないでどうぞ招いておあげなさい」
「でもよ、ここはバランちで、俺んちじゃねえぜ。なにかあったら怒られるのは特に俺なんだけど」
「ヂ シスンティアウムグ! ヤイオ ティティアンディホワクゥムグ ブエワクスティエブブゥムグ ユオデス クゥススゥムグ フディウンムド!!」
「なんて言ったの?」
「スラングまでいくと輪をかけて自信はありませんが……多分アルヴィンさんが聞いたらマジギレしますね。まあ穏便に訳すると『おまえの最低の友達をなんとかしろ』ということです」
「えー、なにその上から目線。いいのかじーさん、こんなやついれちまって」
「ここまで罵られて手を出さないのですから、逆に大丈夫ですよ。それに、いざとなったら全員でボコれば、まあ部屋は半壊するでしょうがなんとかなるでしょう」
「わかった。どーぞ、革命のウィンガル殿。一応ここ俺の従兄弟の家なんで、穏便に頼むぜ」
「一番不穏なのはおまえだ。邪魔するぞ」
ようやく解放された足先を気にしながら、ウィンガルはアルヴィンとローエンに続く。
「みんな、お客さんだぜ」
「えっ、ウ、ウィンガル!?」
リビングで食事中だったなか、スプーンを持ったままいち早くジュードが立ち上がった。
「大丈夫です、今日は話し合いに来られたそうですから」
「ふむ、主人と違って喧嘩っぱやいやつだと思っていたが、そうでもないのだな」
マーボーカレーを食べる手を止めずミラが言った。レイアとエリーゼも一応気にしてこちらに視線をよこしているが、まあ話なら大丈夫かと食事を再開する。
「お父さん……」
最後にブースターが不吉な言葉を漏らしたが、ウィンガルは黙殺した。
「は、なに? おたくティポの親父なわけ?」
そこにいらない茶々をアルヴィンがいれる。
「そうだよぉ〜、だってウィンガルおとーさんがブースター研究の被験者第一号だもん。僕はそのおかげで産まれたんだから」
答えないウィンガルに変わり、ティポが胸をはって答える。
「ふーん、おたくいい趣味してるのな」
どう見てもティポは素直にかわいいとは思えない。
「黙れ。褒めてもなにもでんぞ」
「えっ」
アルヴィンは目を剥いた。追及するより先に、ウィンガルはミラに話かける。
「そんなことより。マクスェル、話がある」
「なんだ」
「ガイアス様をフッて欲しい」
「えっ」
「ほう」
「え?」
「ぶはっ」
ジュード、ローエン、エリーゼ、レイアが騒然とする中、ミラ一人だけが意味が分からず怪訝そうな表情をした(アルヴィンは未だティポショックから復活していない)。
「ふる? ガイアスを掴んで揺するのは、さすがに骨が折れそうだが」
「違う。ガイアス様はおまえを娶るおつもりだ。もしプロポーズされても、陛下と結婚する気はないと断ってくれということだ」
「ふむ、わかった」
えええええええええええええええ!?
周囲が絶叫するなか、ミラは平然と応えた。一番慌てたのはジュードだ。
「ガ、ガイアスがそんなこと言ってたの」
「そうだ。『俺はこの戦いが終わったらミラと結婚する』とはっきりとおっしゃった。死亡フラグだ。なんとしてでも阻止せねばならん!」
ぐっと拳を握りしめてウィンガルは叫んだ。
「それに相手がマクスウェルだろうが誰であろうが、そもそも陛下が結婚など許さぬ!」
「そっちのほうが本音だろ」
「ち、違う! 跡継ぎが出来ては、またロンダウ族が覇権を握ることが難しくなってしまう」
アルヴィンの冷静なツッコミに、ウィンガルは大きく腕を振って答えた。なにもそこまで大げさに否定しなくてもいいのに……。
「ガイアスはいい年だからそろそろ結婚したほうがいいと思うけど、ミラはだめだよ!」
ジュードもスプーンを握りしめたままウィンガルに半ば同意する。
「もしミラにフラれてもガイアスが諦めないようだったら、僕その点はウィンガルに協力するから、なんでも言って」
「そうだな、そのほうがいい。私は子供が産めないから、王妃には向いてない」
「そ、そういう問題じゃ、」
とんでもないことをさらっと言うミラに、ジュードは顔を青くする。だめだ、ミラは全然わかってない!
「よし、その場合はおまえにも協力してもらおう。ジュードがマクスウェルと結婚してしまえば、さすがに陛下も諦めて下さるだろうからな」
「うん、わかった」
さらにとんでもないことを言ってきたウィンガルだったが、ジュードは即答した。
ガイアスがジュード達を打ち負かしジンを駆逐することを前提に彼が話しているのはこのさい仕方がない。蒸し返しても話がややこしくなるだけだ。どちらにしろミラと結婚などさせないのだから、関係ないとジュードは割り切る。
「おまえのことだからさっさと私を殺すかと思えば、また手の込んだことをするな……」
「陛下に釘をさされた。今まで私は独断でガイアス様の邪魔者を排除してきたが、今回ばかりは仕方ない」
呆れとも感嘆ともつかないミラの嘆息交じりの言葉に、ガイアスはしごく嫌そうに口角を曲げて答える。ミラに結婚について言及されなかったことに、ジュードは地味に傷つく。
「おまえたち、勝手に話を進めるな」
そのときだった。聞き覚えのある、低く艶やかな存在感を示す声音が部屋に響く。
「ガイアス!?」
「アースト!?」
どうしてここに。驚く皆をよそに、ガイアスは迷いのない足取りでミラの隣へおもむく。
「我がものとなれミラよ」
「断る」
誰も止める暇もなかった。もっとも、ガイアスの求めにミラは直球で断りをいれたため、止める必要もなかったろうが。
ジュードはミラとガイアスの間に割って入る。
「諦めてよガイアス。シェルは消滅させる。ジンも失くさない。オリジンで代用していく」
つい先ほどまでジュードの牽制はジュードとミラが結婚することであると話していたので、この台詞は一見繋がっていないように聞こえる。しかし、ジュードはガイアスならわかると確信していた。
――ミラを助けるために、ジンを駆逐しようとするガイアスなら。
案の定、レイア達はわけがわからないというふうに二人のやりとりを見ている。
「俺の意志は変わらない。もやは拳でしか我々は決着をつけられない」
ガイアスとジュードの間に緊張が走る。アルヴィンが「だからここバランの家!」と後ろで叫ぼうとしてティポが顔を呑み込んでいた。
「だが、今はそのときではない。ゆくぞ、ウィンガル」
「はっ」
ガイアスの真後ろの空間が裂けた。ジュードは臨戦態勢を解く。虚空に消える二人を見送ってから、ジュードは大きくため息をついて肩を下ろした。
「はぁ、びっくりした」
「マンションが大破するはめにならなくてよかったですね」
「それ、アルヴィンに言ってあげてよ」
「んぐー!」
「『俺はちゃんとミラの心配もしてた』ってアルヴィンが言ってます」
「そ、そろそろティポ外してあげたら?」
「ジュード、マーボーカレーおかわりだ」
相変わらず緊張感のないパーティーにジュードは苦笑する。
「ちょっと待っててね」
ミラから皿を受け取ったジュードはキッチンへ向かう。
「結婚、かぁ」
ご飯をよそい、ルーをかけながらジュードは呟く。
文字通り、それは夢だ。
だが、夢は見ることができる。
見ることだけは、できる。
それでも、ジュードはミラとの将来が想像できなかった。
それでいい。
きっと、思い描えてしまえるようなら、ミラとは道がたがえている。ガイアスのように。
ミラと同じ道を選ぶ。
同じ未来を信じている。
それは共にあることという意味ではない。
だから、
「はい、おまたせ」
キッチンから戻ってきたジュードが私た皿をミラが笑顔で受け取った。
「ありがとう、ジュード」
大丈夫だよ、ミラ。お礼を言うためにおかわりを頼んだこと、僕はちゃんと知ってるから。

おわり


おまけ
ガイアスさんはウルスカーラに戻った瞬間
フラれたショックで体育座りしてメソメソしだたので
ウィンガルさんが機嫌とって慰め終わるのに随分時間がかかりました。


間違えまくりのロンダウ語録
「ヤイオ エディン ディオドゥン!」
  you are rude!
 失礼なやつめ!
「ヂ シスンティアウムグ! ヤイオ ティティアンディ ホワクウムグ ブエワク スティエブブゥムグ ユオデス クウススゥムグ フディウンムド」
 Do something! Your motherfucking backstabbing Judas-kissing FRIEND!
 おまえの汚い罠にはめて裏切る友達をなんとかしろよ!
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