ルビを振りたい言葉の最初に★をつけ、終わりに☆をつけます。 ☆のあとにルビの言葉を書き、★で閉じてください。 圏点も同様です。 _____________________________   1 何度も夢に見る。 崩れ落ちる★魔核☆コア★。 振り返った先の、頬を濡らした表情。 差し伸べる、届かない手。 どうして、あなたは。 嗚呼、俺は嘘★吐☆つ★きだ 。 手など伸ばしてはいないのに。 振り返って逃げただけ。 夢の中ですら、助けられない。 レイヴンが目を覚ますと、じっとりと寝汗で濡れていた。暗い部屋。外からはなにも聞こえてこない、ということは夜明けのちょうど前か。眠らない街ダングレストといっても、さすがにこの時間は静かだ。カーテンを開けて外を見ても、もう夜空に輝く★結界魔導器☆シルトブラスティア★の輪冠は見えない。 寝直す気にもなれず、男は寝台から降りて浴室へ向かった。 汗を流し、着替えると夜明けを見に街を離れる。魔物も生き物なのだなと、こういうときに思う。普通の魔物は眠っているため夜行性のもの以外襲ってこないし、明け方近くだからか夜行性の魔物も動きが散漫だ。ちょっとこちらが一筋縄ではいかない相手だという行動を見せれば、すぐに退散する。こちらとて無駄な体力を消費する気もないので、深追いはしない。魔狩りの剣ならば違うだろうが。 ダングレストを見下ろせる、黄昏の★帷☆とばり★の勢力圏外にある小高い丘を適当に探し、魔物避けの結界を張って腰を下ろす。 ダングレストはちらちらとゆるい明かりを灯している。一定区画を規則正しく移動しているのは、魔物を見張る夜警だ。魔物だって馬鹿ではない。人間のいる街に足を踏み入れることはあまりないが、それでも結界がないのだからはぐれた魔物や人間の味をしめた魔物が襲ってくることもある。 結界が消えると知って、人々は魔物の襲撃に恐怖したが、蓋を開けてみれば四六時中魔物が襲ってくるというわけでもなかった。 魔導器がなくても、不便でもそれなりに生活ができる。逆に、不便を解消するために新しい技術や精霊術の研究も活発だ。もう一部では、試験的に実用化もされている。 (人間て、すごいねえ) 朝日が昇る。赤紫色の空。優しい風に乗って、世界の声が聞こえる。大気に満ちるマナの囁き。エステル程ではないが、マナを糧とする己の★心臓魔☆カディス★導器のおかげで、集中すればこうして彼等精霊すら感じることができる。 同調するように意識を傾けると、身体が軽くなった。いつもは怖くてこんなことはしないが今日は違った。どこかへ、行ってみたくなった。 見えている視界は人間と変わらないのに、まったく受け取る情報が違う。世界の構成が★視える☆圏点★。真理に触れようと思えば、すぐにでも。その近すぎる距離感にレイヴンはおののく。自分はこんなにもこれらの近くに存在しているのか。 『これはお久しぶりですね』